社會の片隅に生きる若者を田村正和が力演した社會派ドラマ。母親殺しの嫌疑をかけられた聾者の青年。すべてが不利ななか、馴染みのホステスだけが彼の無実を信じて奔走する。 生まれながらに耳の不自由な佐々木晉一は、病弱な母親との生活を支える工員であった。不幸に閉ざされた晉一の心は、工員相手のバーに勤める石母田幸子に出會って、わずかに明るさを加えた。そんな晉一を誰よりも喜んだのは母の辰子であった。晉一が幸子から母の好物を買うようにともらった金で、ワカサギを買ったその日、辰子は白い汚物を吐いて死んだ。原因は晉一の與えた栄養(yǎng)剤の中にヒ素が入っていたのだ。晉一は母親殺しで逮捕された。たどたどしい言葉で、耳の聞こえない晉一に、訴えるすべはなく、同情を寄せる者もなかった。だが、幸子と聾學(xué)校長の館野や教師だけは晉一の無実を信じていた。
上一篇:明朝病起看花去,斗酒一錢猶恨無