安西茂との不幸な結(jié)婚生活に終止符をうったふみ子は、二児を抱えて実家に戻った。たまたま、ふみ子とは幼友達のきぬ子の良人森卓が外地から引揚げて來たのを機に、北海タイムスの山上家では短歌のつどいが催され、勧められるままに何首かを詠んだふみ子は絶讃を浴びた。その夜、見送りの途すがら、森のかけた激勵の言葉は、ふみ子の心に明るい燈をともした。ある日、仲人の杉本夫人が來て、離婚手続の済んだことを知らせたが、長男の昇だけは良人の許に帰さなければならなかった。そんなある日、森が急病で死んだ。泣くにも泣けない気持でふみ子は森の寫真を見つめるのだった。安西家からこっそり昇をつれ戻し、親子水入いらずで東京に職を見つけようとしたふみ子は、乳癌で札幌病院に入院した。先頃「短歌時代」に新人作家の募集があった時、森によって送られた彼女の短歌が入選し、歌壇の話題となっていることを東京... (展開全部)