むかし、三條天皇のお妃がご懐任になったとき、お妃の父にあたる関白基経は全國の高僧、加持祈禱師を集めて、王子が授かるように祈願させた。北山の鳴神上人が大寒のさ中に水をかぶり二十一日間の荒行を続けたのは、もし王子が産まれたら褒美として、北山に戒檀堂を建立するという內(nèi)約があったからだ。その效あってか、やがてお妃は玉のような王子を産み落したが、戒壇堂建立は沙汰やみになった。立腹した上人は北山へ帰ると、法力で三千世界の竜神を竜つぼにとじこめ一滴の雨も降らぬようにしてしまった。旱魃続きにびっくりした朝廷では陰陽師阿部晴明に占わせたところ、鳴神上人の法力をとくには「遊船叢」という唐文を読む以外に方法はなく、文學(xué)博士大江是時の孫娘くものたえま姫のほかに適任者はいないと斷言した。勅命により參內(nèi)したたえま姫は文屋豊秀との縁組を條件に、この大役を引き受けた。そして、姫はみ... (展開全部)